NetApp's Cloud Strategy

テックバイザージェイピーの栗原さんが、NetAppのクラウド戦略をブログで解説されています。日本語のブログでストレージ企業の戦略が解説されることは(私の知る限り)非常に稀なので、嬉しくなって反応してみます。

NetApp社のクラウド戦略について(1):栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmedia オルタナティブ・ブログ

ベンダーがクラウド戦略について考える時には、以下の3つの方向性で考えることが重要であるというような話を以前書きました(日経BPのサイトにも同様の内容をより詳しく書いてます)。
1.クラウド・プロバイダーに対してシステムや運用管理ツールを販売する
2.クラウドを活用するユーザー企業のインテグレーションを支援する
3.自らがクラウド・プロバイダー事業を行なう
NetAppのクラウド戦略の方向性は明快で、上記の1のみを追究するというものです。理由は単純で「パートナーと競合したくない」ということであります。同社は今のところ製品テクノロジーに徹したベンダーですので当然の戦略とも言えます

最近はData Domain買収騒動ばかりが報じられるNetAppですが、本来は(マーケティングやM&Aよりも)自社開発の技術と製品に軸足を置く企業と思います。クラウドの新領域にビジネスを拡大する誘惑にNetAppは当然駆られたと思いますが、それらを捨てて一ストレージ装置ベンダとして戦うという戦略はNetAppらしい自然な選択と私も感じました。
しかしながら、アナリストからは「戦略としてはよいが、それでクラウド戦略と言えるのか?」といった反論があったようです。NetAppは果たしてどのように反論したのでしょうか?NetAppのFounder and Executive Vice PresidentであるDave Hitzのブログを引用してみたいと思います。
http://blogs.netapp.com/dave/2009/07/netapps-cloud-strategy.html

Part of the disagreement comes because NetApp’s strategy is not to build clouds ourselves, but to help other people build them. Some people view this as an excellent strategy, while others think it doesn’t even count as cloud a computing strategy at all. In response, I would ask this simple question: “Does Microsoft have a PC strategy?” It’s true that Microsoft doesn’t actually build any PCs, but it seems obvious to me that they are a key driver in the PC industry and absolutely have a PC strategy.

返答は、「マイクロソフトはPC戦略をもっていたか?」−−−マイクロソフトのようにPCは作らずともコア技術を握ることで業界の主導権を握る、というのがNetAppのクラウド戦略なのだという意味ですね。
しかし、NetAppはクラウドストレージにおけるマイクロソフトに本当になれるのか、という疑問が当然ながら湧いてきます。クラウドストレージに近い製品形態の一つとしてスケーラブルNASがありますが、NetAppはNASで絶対的なシェアを持ちながらもスケーラブルNASでは遅れをとっている印象があります。また、EMCのAtmosのようなクラウドに特化したストレージの発表も(私の知る限り)行われていないと思います。
マイクロソフトの比喩は非常に洗練された回答ではありますが、説得力を増すためには「どのようにしてマイクロソフトになるのか」という戦略も示される必要があると感じます。何が競争優位の源泉なのか、製品と技術はどんなものになっていくのか…等々。
ここで、もう一度栗原さんのブログに戻ります。

さて、ここでポイントとなるのが、クラウド市場でどう差別化要素を提供していくかです。クラウド基盤の設計思想は安価なコモディティ・ハードを大量に使うことで、パフォーマンスと信頼性を確保することにあることが多い(それがすべてではないですが)中で、ハードベンダーの差別化はなかなか困難です。この困難な課題に対するNetAppの回答については次回に。

次回が非常に楽しみです。