米国で優秀なトップ人材を雇う利点とは: (1)大規模な成功を目指せる

渡辺千賀さんが「アメリカで事業を始めるシリーズ」をブログで連載されていますが、その第一回目のエントリにて、米国で優秀なトップを雇うことの重要性が力説されています。

「アメリカでの事業立ち上げでは、まずはスーパー優秀なトップを雇う」
ということがどれだけ重要かは、何度言っても言い過ぎということがないくらい重要。これをやる気が無いのだったら、アメリカで事業を立ち上げるための組織を作ろうなどと夢にも思わない方がいい。

私もこれは非常に重要な点だと思います。でも、この重要な点は意外とあまり知られていないんですよね。日本人のミドルマネジメントを送り込んで、その下に優秀な人を雇えばいいじゃないか、普通はそういう風に思うのではないかと思います。

米国で優秀なトップを雇用することがなぜそんなに重要なのでしょうか?

これからいくつかのエントリに分けて、このトピックに対して自説を述べてみたいと思います。

私の説は、主に、私の経験から考察したものです。私は過去に、スタートアップの経営陣を歴任した方(米国人)の部下として、米国事業の立上げを行ったことがあって、その仕事ぶりを近くで見ることができました。その結果、千賀さんと同じ結論に至りました。なお、業界としては私の専門であるIT業界を前提としていますので、ご了承下さい。

では、まず一点目です。

大規模な成功を目指せる

米国、特にシリコンバレーのスタートアップで企業家としての経験を積んだ方は、事業の目指す「成功」のスケールが、普通の日本のミドルマネジメントが考える成功に比べて桁違いに大きいと思います。つまり、成功の定義が、米国のスタートアップの企業家と日本人のミドルマネジメントでは、大きく違うのです。

それはなぜでしょうか?

米国のスタートアップでは、ある市場分野で世界レベルで1、2位を目指すのが当たり前です。理由はいくつかあると思いますが、投資家からのプレッシャーがまず挙げられます。ベンチャーキャピタルはそのレベルの成功を前提として出資しているため、そういった成長戦略をスタートアップは描かざるを得ません。

米国での新規事業の競争相手はスタートアップであることが多く、競合他社はそういった成長戦略を描いてくることがほとんどです。そのため、こちらも同様の成長戦略を描いていかなければ、確実に負けます。

そのような背景から、優秀なトップ人材は市場で1、2位を狙うプランをごく自然と作ります。彼等はそういった目標設定に慣れており、生半可な目標を設定したりせずに、そういった大成功を大真面目で狙いにいきます

これは、物凄い成長スピードを志向するということです。市場で上位を狙うためには、毎年100%以上の成長を図る事業プランを描かなければなりません。組織作りなどの戦略は、スモールスタートする場合と全く違ってきます。

普通の人材では、大規模な成長戦略を描けない

普通の日本人のミドルマネジメントがトップに立った場合、そこまでの成長戦略を描けるでしょうか?恐らく難しいと思います。米国市場でのビジネスの知識や経験をあまり有していないことが多いからです。アメリカで勝つためのビジネスの進め方を知らなければ、大きなリスクをとるプランを描くことはできないでしょう。(例えば、後々の成長を見込んで人を多く雇うようなことはできないでしょう)

また、たとえ米国人でも、経験が不足している企業家を雇った場合、同じ問題にぶちあたると思います。過去に市場で1、2位を実際に目指した経験を満足に持っていないのに、競合他社の海千山千のCEOたちを打ち負かすプランを描いてくるのはかなり難しいはずです。

なお、日本人のミドルマネジメントもそういった高い目標を掲げることはあります。しかし、多くの場合はそれは「努力目標」であって、本気でそのレベルを狙いにいっているわけではないことが多いと思います。(これは、組織作りやマーケティング戦略がそういった高みを目指していたものになっていないという意味です)

まとめると、「米国の優秀な企業家を雇うことで、米国、引いては世界で勝つという非常に大規模な成功を目指して活動することができる」、というのが現地で優秀なトップ人材を雇うことの大きなメリットだと思います。

なお、そこまで大規模な成功を目指さないのであれば、日本人のミドルマネジメントや、そこそこのレベルの現地人材をトップに置くというのは有効な解になり得ると思います。

追記

米国市場に限った話ではありませんが、楽天の吉岡さんも、経営者人材の重要性について力説されています。
2010-01-17 - 未来のいつか/hyoshiokの日記