Cloud Exchange (クラウド取引市場) というアイディア

最近、Cloud Exchange(クラウド取引市場)という、クラウドリソースを株や穀物の様にマーケットで売買するというアイディアが出てきて、ブログ等で議論になっています。本日は、このトピックを簡単に紹介してみたいと思います。

クラウドリソースはフライトチケットに似ている?

クラウドリソースは、実は、ホテルやフライトチケットなどと似た特性を持っています。

それは、「使わないと無くなってしまう」という特性です。

ホテルやフライトは、空き部屋・空席があった場合、それを使わないとそのリソースはそのまま無くなってしまいます(昨日の空き部屋は今日は使えない)。クラウドリソースもその点では同じで、例えば今日空いているサイクルがあったとして、それを使わなければ、そのサイクルは明日には無くなってしまうわけです。

ホテル会社や航空会社は売れ残りをできるだけ避けるためにどうしているかと言うと、需要に応じて価格を大きく変動させているわけです。

今まで、クラウドコンピューティングにおいては需要に関係なく価格を一定にするというモデルが一般的でしたが、ホテルやフライトのように需要に応じた価格変動を行うことに大きな可能性があることは、容易に想像がつきます。

そのような背景から、AmazonのSpot Instancesなどが出てきているわけです。

Cloud Exchange(クラウド取引市場)とは

この需要・供給に基づく変動価格モデルから一歩考えを進めたものが、Cloud Exchange(クラウド取引市場)です。需要と供給で値段が決まるのならば、それを取引所で売買できるようにしてもよいのではないか、というアイディアです。

売り手としては、クラウドサービスプロバイダーが考えられます。彼等は余剰リソースを抱えていますから、それを販売したいというニーズは潜在的にあると考えられます。

買い手は、まずは企業が考えられます。余剰リソースを、市場の適性値段で購入するわけです。

また、面白い例としては、サービスプロバイダーが買い手となることも考えられます。サービスプロバイダーが急にリソースを必要とするリスクは色々とあります。例えば、スパイク状の需要が急に発生するかもしれません。また、災害によるリソース不足が急に発生するかもしれません。

現状では、そのようなリスクに対し、自社の施設で余剰リソースを抱えて対処するやり方しかありません。しかし、他のプロバイダーの購入オプションを手に入れることで対処する方が理に適う場合もあるかもしれません。そういったオプションを取引所を通して買うわけです。

なかなか面白い考え方だなあという感じはします。

以下のエントリ等に詳しい説明がありますので、ご興味のある方は参照頂ければと思います。
Could A Cloud Computing Exchange Work? | Data Center Knowledge
Hedging Your Options for the Cloud — Tech News and Analysis

Cloud Exchangeへの反論

しかし、このCloud Exchange構想への反論も出ています。Gordon Haff氏はWhy cloud exchanges won't work - CNETというエントリを書き、そこでCloud Exchangeがうまくいかない理由として以下を挙げています。

  • インターオペラビリティ(相互運用性)に欠ける: 各社クラウドサービスの標準化が十分ではないため、クラウドサービス間で透過的に移動することができない
  • セキュリティとコンプライアンスへの不安: 顧客はパブリッククラウドサービスのセキュリティに不安を持っている。複数のプロバイダをCloud Exchangeを通して使うと、その問題は更に深刻になる
  • データアクセスの問題:データは簡単にプロバイダ間を移動するようなことができない

指摘事項は的確で、もっともだと思います。少なくとも今後数年間は、これらの問題を解決することは非常に困難な感じがします。

ただ、Cloud Exchange自体、未来の構想として語られているわけであって、それに対して現状の問題を並べ立てて反論するのは少し可哀想かなという気はします。今後、標準化やセキュリティ問題などが解決に近づくにあたり、状況は変わって来る可能性はあるとは思います。(もちろん簡単ではないですが)


以上、Cloud Exchangeというアイディア、そしてそれへの反論について、簡単に紹介してみました。